9月1日(月)14:40〜16:40
※本シンポジウムは一般公開いたします. Zoomでの配信を予定しています.
※事前申し込み(こちらから)が必要です.質疑応答をZoomを通して行いますので,現地参加の方もお申し込みください.
コンピュータを活用して教育・学習を支援する情報システムの研究・開発は,本学会の設立以前から行われており,半世紀以上にわたる歴史がある.その基礎を築いているのが「教育システム情報学」である.この学問分野は,学習という人間知性の中でも極めて重要な機能に焦点を当て,システマティックかつ有効な学習支援や教育実践の実現を目指して,コンピュータサイエンスと情報学を軸に,教育学,心理学,認知科学,知識工学,人工知能などの多彩な分野から学習や教育に関わる知見や研究方法論を融合しながら学際的な発展を遂げてきた.現在,利用できる情報通信技術も多彩となり,また生成AIのような高度なインテリジェントツールが登場して教育・学習支援システムが果たせる役割も飛躍的に拡がっている.そして,その基礎となるべき教育システム情報学自体も発展途上にあるといえる.本学会も,システム研究・開発,教育実践等の研究者が一同に介して,この教育システム情報学の確立を目指しているところである.
一方,学問分野の発展には教科書の存在は欠かせない.教科書とは,当該分野を知るために必要な一連の知識や技能を学べるリソースであり,分野を俯瞰することに資するものといえる.また,初心者にとっては,当該分野への門戸を開く重要な役割を担うものである.しかしながら,教育システム情報学は,学際的な学問であることから教育・学習支援に対する見方・考え方,分野を俯瞰する観点は非常に多岐にわたり,統一的な教科書を作ることは非常に困難であると言わざるを得ない.しかし,これだけの歴史を有し,さらに発展を続ける学問分野を支えるためには,「どんな教科書が求められるのか」という学問分野にとって極めて本質的かつ重要な問いを持ち続けることが何よりも肝要である.
そこで,本シンポジウムでは,4名のパネリストに教育・学習支援に対する異なる観点から自分ならどんな教科書を作るかを示してもらい,教育システム学分野の俯瞰の仕方,教えるべき一連の知識や技能について共有しつつ,指定討論者を含めて教科書間の違いに焦点を当てた議論を行い,教科書作成の困難さを浮き彫りにしたい.そして,教育システム情報学における教科書作成の課題や今後の展望を考える一助としたい.
西端 律子
(畿央大学)
畿央大学教育学部,教育学研究科教授(主任).博士(人間科学・大阪大学).
1992年大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了.大阪府立工業高等専門学校(当時)助手,1997年大阪大学人間科学部助教,2008年畿央大学教育学部准教授を経て現職.文部科学省中央教育審議会デジタル学習基盤特別委員会特別委員会委員.情報コミュニケーション学会副会長.専門は初等教育及び特別支援教育におけるICT活用やプログラミング教育.
松居 辰則
(早稲田大学)
早稲田大学人間科学学術院人間情報科学科教授,博士(理学)
1988年早稲田大学理工学部数学科卒業,博士(理学).早稲田大学,東京学芸大学,電気通信大学を経て2004年から早稲田大学勤務,2007年教授.知識情報科学,感性情報科学,学習・教育支援システム,ラーニング・アナリティクス,教育評価の数理,スキルサイエンスの各分野の研究を行っている.最近は,生体情報からの心的状態推定方法の開発と学習支援への適応に関する研究,人間の感情表出に関する脳機能モデリングに関する研究に興味をもっている.教育システム情報学会前副会長,学習分析学会理事長,APSCE ECメンバなど.
松浦 健二
(徳島大学)
徳島大学教授,情報センター長,副理事(情報担当).博士(工学).1996年日本電信電話株式会社,2002年徳島大学博士後期課程修了.同年ドイツKMRC研究員,2003年徳島大学助手,2015年同教授.非同期仮想教室,反復運動スキル開発,チーム戦術学習支援,車両運転技能向上支援,マルチオブジェクトトラッキング,視線追跡等の研究開発,情報基盤,ID管理,認証連携,セキュリティ等の実務に従事.現在,大学ICT推進協議会理事,教育システム情報学会理事・副会長等.
仲林 清
(公立千歳科学技術大学)
1982年東京工業大学理工学研究科修士課程修了.同年日本電信電話公社入社.同社情報通信処理研究所主幹研究員,放送大学教授,千葉工業大学教授を経て,現在,公立千歳科学技術大学情報システム工学科教授,熊本大学教授システム学専攻客員教授.2006年早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了.博士(人間科学).本学会元会長.研究分野は,学習支援システムアーキテクチャ,技術標準化,授業設計・実践,など.
柏原 昭博(電気通信大学)